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《テーマ7》根抵当物件の競売取下げと追加担保

 自営業を営むAさんへの融資の担保として、Aさん所有の不動産に根抵当権の設定を受けていますが、貸金の返済が滞るなどAさんとの信頼関係が損なわれ、また、担保不動産の評価額が下落しているにもかかわらず追加担保提供等にも応じてくれないため、やむなく根抵当権を実行し、競売開始決定がなされました。
  その後、Aさんの態度が軟化し、Aさんから、父Bさん所有の不動産を追加担保とすることなどを条件に競売の取下げ要請があったことから、今般、競売を取り下げました。

1.更なる融資の可否

Aさんは、今後も従来どおり当行との取引を継続したいとの意向ですが、この根抵当権を担保に運転資金等を融資してよいでしょうか?

根抵当権は、その実行による競売開始決定により元本が確定していますので、この根抵当権を担保に新たな融資をすることはできません。

 競売等にかかわる元本確定事由には、

@根抵当権者自身の申立に基づく競売開始決定
A他の債権者の申立による根抵当不動産に対する競売開始決定や滞納処分による差押
B債務者・設定者の破産手続開始決定

などがありますが、A・Bによる元本確定については、(取下げ等により)手続の効力が消滅した場合は元本確定の効力も覆滅します。

 しかし、@による元本確定の場合は、競売を取り下げても自らの根抵当権の元本確定の効力は消えません。したがって、質問の場合、競売を取り下げても根抵当権の元本は確定したままですから、新たな融資はこの根抵当権では担保されないことになります。

2.極度額増額と追加担保設定の可否

根抵当権の極度額を引き上げるとともに、Bさん所有の不動産を追加担保とすることは可能ですか?

根抵当権の極度額を引き上げることは可能ですが、追加担保としてBさん所有の不動産に根抵当権を設定することはできません。

 根抵当権の元本が確定した後においても、(後順位の担保権者など利害関係人の承諾が前提となりますが)極度額を増額することは可能であり、その旨の登記もできます。

 しかし、元本確定した根抵当権の共同担保として、新たな不動産に対する根抵当権の追加設定契約をしたとしても、これを登記することはできません。これは、根抵当権が一義的に不特定の債権を担保するという性質を有する担保権である以上、当初から(元本が確定し)特定の債権のみを担保する根抵当権は実体法上も成立しないと解されることによるもののようですが、いずれにせよ追加設定登記を申請しても受理されません。

 したがって、Bさんの不動産を既存の根抵当権の追加担保とすることはできないと考えてください。

3.根抵当権追加設定の代替策

根抵当権の追加設定ができないとすれば、どう対処すべきでしょうか?

新たな根抵当権を設定するしかないでしょう。

 Aさんとの取引を今後も継続するとすれば、新たな融資は別の根抵当権で担保するしかありません。したがって、Bさん所有の不動産には、新たな根抵当権を設定することになりますが、元本が確定した根抵当権の被担保債権は返済に伴って減少し、担保余力が生ずるわけですから、必要に応じて、既存の根抵当権が設定されているAさん所有の不動産にも新たに(2番)根抵当権を設定し、Bさん所有の不動産の根抵当権と共同担保にしておく、という対応も考えられます。(この場合は、元本確定した根抵当権を解除することも可能です。)

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