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《テーマ4》根抵当権の元本確定

 取引先A社の業況が悪化し、A社の弁護士から債務整理・法的倒産手続等の受任通知が届いたため、上司に、A社所有の不動産に設定を受けている根抵当権について「元本確定登記」をするよう指示されました。

1.根抵当権の元本確定とは

根抵当権の元本確定とは何ですか?

新たな貸付金がその根抵当権によっては担保されなくなる、また、根抵当権が普通抵当権化するということです。

(1) 根抵当権は、特定の債権(例えば特定の住宅ローン)だけを担保する普通抵当権とは異なり、極度額の範囲内で一定の範囲に属する不特定の債権を担保する担保権です。つまり、一度根抵当権の設定契約を締結して登記しておけば、何度融資しても(極度額の範囲で)当然にその根抵当権で担保されるという特殊な抵当権で、融資の度に抵当権の設定契約や登記をする必要がないという大きなメリットがあるため、事業資金等の融資を繰り返す必要がある会社や事業者といった取引先に関しては一般に利用されています。
 こうした不特定の債権を担保する根抵当権が、ある時点に存在する債権しか担保しない状態になる、すなわち、以後発生する債権は担保されなくなるという現象が元本の確定です。

(2) 普通抵当権には、被担保債権と運命を共にするという性質(これを付従性・随伴性といいます)、つまり被担保債権が消滅すれば抵当権も消滅し、被担保債権が譲渡されれば抵当権も一緒に移転するといった性質がありますが、元本確定前の根抵当権にはこうした性質がありません。したがって貸付金が全額返済されても根抵当権は当然には消滅しませんし、被担保債権が譲渡されても根抵当権が当然に移転するということはありません。
 しかし、元本が確定すると、根抵当権にも普通抵当権と同じように被担保債権に対する付従性や随伴性が生じ、被担保債権が移転すれば根抵当権も一緒に移転するようになります。
 こうした意味では、元本確定によって、根抵当権が普通抵当権化すると言ってもよいでしょう。

2.元本確定が必要な理由

なぜ、元本を確定させなければならないのですか?

実務上は、代位弁済をしてくれる保証機関等に、スムーズに根抵当権を移転させるためです。

 上記〔A1〕Aで述べたように、元本確定前の根抵当権には随伴性がないため、被担保債権が第三者に移転しても、根抵当権は当然には付いていきません。

 しかし、融資機関が保証機関から代位弁済を受ける際は、一般に担保権の移転が条件とされるでしょうから、元本確定前の根抵当権の被担保債権について代位弁済を受けるとすると、根抵当権についても別途譲渡手続をとらなければならないわけですが、この根抵当権の譲渡には法律上設定者の承諾が必要なため、その協力なしには根抵当権の譲渡ができないのです。

 

 一方、普通抵当権や元本確定後の根抵当権には随伴性があり、被担保債権について代位弁済がなされれば、担保権も当然に代位弁済者に移転することから、設定者の承諾は必要ありませんし、移転登記の登記手続上も設定者の協力を要しません。

  このため、金融機関の実務上は、保証機関の代位弁済を受ける際は、それに先立って根抵当権の元本を確定させるのです。

3.元本確定の具体的な手続

根抵当権の元本を確定させるには何をしたらいいのですか?

 根抵当権の元本が確定する理由(元本確定事由)はいろいろありますが、金融実務上重要なのは、

@根抵当権者と設定者の合意
A他の債権者による根抵当不動産に対する競売申立や滞納処分による差押
B債務者・設定者の破産手続開始決定
C根抵当権者による元本確定請求

の四つでしょう。

 このうち、根抵当権者が直接関わる元本確定事由は、@とCですが、Cは近時の民法改正で新たに認められた確定事由で、以前は、金融機関が積極的に元本確定を図るには(自ら競売を申立てる以外は)@の方法しか無かったため、設定者の協力が得られずに苦労するケースが多かったのです。

 しかし、Cの確定事由が認められてからは、金融機関の一方的な請求による元本確定が可能となり、元本確定手続が格段にスムーズに運ぶようになりました。具体的には、根抵当権の元本確定を請求する旨の文書を内容証明・配達証明郵便で設定者に送付しますが、この郵便が設定者に到達することによって元本確定の効力が生じます。

3.登記手続

元本確定の登記手続はどうなりますか?

 根抵当権者の単独申請で、元本確定登記をすることになります。

 根抵当権の元本が確定しても、登記実務上は「登記簿上元本の確定が明らか」とされる一定のケースを除き、先に元本確定の登記をしなければ、元本確定を前提としたその後の登記(代位弁済を原因とする根抵当権の移転登記等)ができません。そして元本確定の登記には、その確定事由により、根抵当権者と設定者による共同申請が求められるものと、根抵当権者が単独申請できるものとがあります。

 上記〔A3〕@の方法で元本を確定させた場合は、共同申請による登記となるため設定者の協力が必要ですが、A・B・Cの事由で元本が確定した場合は、根抵当権者の単独申請で元本確定登記ができます。特に、Cの方法で元本を確定させた場合は、無条件で元本確定登記の単独申請が認められ、具体的には、登記申請に際し、確定請求をした内容証明郵便の控えと、配達証明書(はがき)を添付するだけで済みます。

 なお、A・Bの確定事由により元本確定した場合も、根抵当権者が単独で登記申請できますが、これらの場合はCと異なり、元本確定登記と一緒に「根抵当権またはこれを目的とする権利の取得の登記」の申請(例えば根抵当権の移転登記の申請)がなされることが条件とされていますので、元本確定登記だけの申請は受理されません。

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